対話が重要、でもそもそも対話とは…?
◆保育の実践(プロセス)の質の向上に不可欠なもの…
◆働きやすくて、働き甲斐にあふれた職場づくりに重要なもの…
◆安定した施設運営に欠かせないもの…
全てに共通する答えが「対話」です。
しかし、そもそも対話にはどんな目的があり、どのような道筋を辿るものかが曖昧なまま、「対話が重要」「対話の質を向上しよう」という号令めいたメッセージばかりがひとり歩きしている印象がありませんか。
たとえば、会話や議論とはどのような違いがあるのでしょうか。
議論とは、対話とは、会話とは
◆議論( discussion )
●目的:結論を導く(合意の形成、問題を解決する)
●道筋:各々の立場・視点から異なる意見をぶつけ合い、最良の意見を選び取る、または創り出す。
●終着:折り合いがつかない場合は、説得と譲歩を繰り返し、妥協点を模索していくケースが多い。
◆対話( dialogue )
●目的:相互の理解を深めること(探求・発見し、それらを共有する)
●道筋:相互に意見を聴き合い、伝え合う。
●終着:無理に合意形成する必要はなく、それぞれが発見したものが違っていてもよい。
◆会話( conversation )
●目的:関係を築くこと(情報の交換・情動の交流)
●道筋:論点や道筋を気にせず、情報や気持ちを交換し、関係性を深める。
●終着:対立や葛藤をできるだけ回避し、話を繋ぐ。
ファシリテーションを学ぶと、議論・対話・会話は上記のように整理されていると説明されます。
言葉の定義は様々に為されるものですが、当ラボにおいては、特に断りのない場合は、上記の定義に基づいて「議論」「対話」「会話」という用語を用います。
なぜ対話が重要視されるのか
近年、保育の質の向上、保育の魅力発信、保育分野における業務改善などの文脈で、「対話を重視」「対話の質を向上させる」といった表現が多く用いられるようになっています。
中でも、保育の質の向上に関する話題では、その傾向が顕著です。
おそらくその理由は、保育の質を一定・一律の指標によって評価することが非常に困難だからです。
また、保育の質の向上には、カリキュラム・マネジメントの充実が必須ですが、その根幹である子ども理解もまた、対話によって客観性と妥当性を付与していく必要があります。
なぜなら、子どもが何に興味を持っているのか、周囲のヒト・モノ・デキゴトと関わり合いながら、何を感じたり・気づいたり・考えたり・表現したりしているのか、それらを捉える保育者の視点にはどうしても主観が入り込むからです。
同じものを見て(聴いて)、あるいは同じ記録を読んでも、それぞれの保育者の感じるもの、考えることには違いがあり、その違い故に子ども理解には奥行きが生まれます。
そのためには、違いを許容し、また尊重し合うという了解のもとに対話を積み重ねることで、職場内に心理的安全性が確立されることが大切です。
しかし対話を学ぶ機会は保障されない
実のところ、対話の機会や、それ以前に会話の機会も満足に保障されていない施設の方が多いのが実情です。
そんな状況下で、保育計画やケース対応などのための合意形成ばかりが繰り返されると、精神的な疲労は蓄積するのはもちろんのこと、会話による関係構築や対話による相互理解の大切さについて学ぶ機会も失われます。
会話→対話→議論という積み重ねを建築に例えるとすれば、基礎を造らず、柱も立てず、いきなり屋根を葺こうとすることに似ています。
無理が生じて当然ですよね。
対話を学ぶ時間を捻出するためにも、まずは手厚い人員配置を実現させたい。当然、そんな考えに至ることでしょう。
でも実は、人員を増強したことが却って対話を学ぶ時間の捻出を難しくしてしまうこともあるのです。
次回のブログ『コミュニケーションのコストについて考えてみよう』で、その辺りを解説します。
7コメント
2022.02.18 23:38
2022.02.18 23:15
2022.02.14 13:46